第2章 第1章 旅立ちまで
宝晶についての知識は、殆どの大人が持っている。
それは一般教育としてその歴史とともに伝えられ書物としても遺されるからだ。
「宝晶を見つけられるのは...能力を持った人だけ...だなんて。」
雪絵は信じられない気持ちで鼻歌を歌いながら手を洗う愛娘を見た。
今、雪絵が手にしているのは紛れもなく宝晶だ。
幼き頃に雪絵は1度宝晶を見ている。
だからこそ、余計それを持っているという事実が重くのしかかるのだ。
自分の愛娘、朱里には能力があるのだと。
信じられない事実を手の中の輝きが真実だと告げているように感じ、雪絵は顔を顰めた。
「...とりあえず、相談しなくちゃ。」
宝晶を朱里の見えない所に置き、途中だった夕飯の支度を再び再開した。
しかし、その表情は決していいとは言えないものだった。