第34章 三成、茶屋へ行く
「羊羹と茶を頼む」
「はい、お待ちください」
微笑んで春は対応するが、男から離れた途端、笑みが消える。
片付けている葉月のところへ行き、春はそっと話し掛ける。
「葉月、また、あの男が来ているよ」
「え…」
ちらりと見ると、ここ数日、毎日のように羊羹を食べに来ている男の姿を見た。
男はじっとこちらを見ているようだった。
「…羊羹がよっぽど気に入っているんだね、あの人」
「…そういう事じゃないと思うけど」
「いいよ、私が持って行く」
春は男が葉月に興味を持っているようにしか思えないが、葉月本人はただ羊羹を食べに来ているお客だ、としか認識していなかった。
一度茶屋の中に入った葉月は、用意をして、注文された品を持って出てくる。
「お待たせしました」
男のところへお茶と羊羹を運ぶ。
「ありがとう」
男は礼を言ってお茶と羊羹を受け取る。
「どうぞごゆっくり」