第34章 三成、茶屋へ行く
「何故でしょう…葉月さんの笑顔を見たら、一瞬息をするのを忘れました」
舞は絶句する。
『ええと、それは、もう、あれしかないよね…?』
何と言っていいのかわからず戸惑っているところへ、春がお茶と羊羹を持ってきた。
「お待たせしました。どうぞごゆっくり」
「あ、美味しそう!三成くん、食べようよ!」
三成の感情をごまかすように声を掛け、二人でお茶と羊羹を堪能した。
「栗が入ってます、か…?」
「え…三成くん、わかるの?」
食べ物に頓着しない三成が、この羊羹は何が入っているか気が付いた。
「はい、そういえば何でわかったんでしょう?」
三成は自分でも不思議がって首を傾げる。
『完全にあれ、だよ?全然気が付いてない三成くん、天然すぎる…』
舞は天然すぎる三成の様子に、対処が見つからなかった。
二人が甘味を楽しんでいる時、隣の腰掛けに一人の男が座った。
若く背丈も有り、容姿も悪くない、町人のようだった。
春が男に気が付いて話し掛ける。
「いらっしゃい。どうしますか?」