第4章 名字は上杉
しばらく葉月は呆けたように立ちすくんでいたが、考えてもわからないと諦め、ようようの体で聞く。
「…あのっ、今は、何年ですか?」
「…1583年だが?それがどうした」
「…1583年…」
平成から500年も過去の年が秀吉の口から出てきて、葉月は息を飲む。
「…本能寺の…変…」
思わずつぶやいた言葉に、秀吉は反応した。
「何故おまえ、それを知ってる…?」
「…え?だって、歴史で…」
瞬時に固い表情になった秀吉は、表情同様固い口調になり、葉月をぐいと引っ張る。
「秘密裡に処理をしているから、その事を知る者は少ないんだ。
即座に答えるとは、ますます怪しい」
またも二の腕を捕まれ、ぐいぐいと引っ張られていく。
今度は全く待ってもらえる余裕がなかった。
ただ、必死に、伝える。
「に、荷物っ!大きな木のところの荷物…っ!」
秀吉は、近くにいた配下の別な武士達にうなずく。
彼らは見たこともない荷物の形状や素材に訝しげな顔をしながらも拾い、秀吉とひきずられる葉月の後ろからついてきた。