第32章 茶屋に行く
「この羊羹作るのに、毎日大量の栗を処理しているって事か」
「伊達様、ご存知なんですか?栗の下処理は時間のかかる事を?」
春が政宗のつぶやきを聞いて、問いかける。
「ああ、俺は料理が趣味で、結構いろんなものを作ってるぞ」
「そうですか。あの子も料理が出来るようですよ。
そのうちここでも食事を提供出来るようにしたいとは思ってるんです」
春の言葉に、政宗が気付いたように口に出す。
「そうか…」
「どうしたの?政宗?」
舞が政宗の顔を覗いて聞く。
「以前、秀吉の御殿で朝餉を摂った時、味付けが全く違っていた事があったんだ。
調理番を変えたとは言ってなかったから、誰が作ったのか会ってみたいと思ってたんだが…そうか葉月だな、あの時の料理を作ったのは」
一人で納得する政宗に、舞は首を傾げる。
首を傾げると、舞の髪の毛がさらりと音をたてるように、傾げた側に流れる。
その姿を横目で見た政宗は、舞はそんな仕草すら綺麗だな、と思う。
「お菓子も作れて料理も出来るのね、葉月さん」
「なんだ?妬いてるのか?舞は縫物が格段にうまいじゃないか」
政宗はにやりと笑みを浮かべ、舞に言う。