第29章 秀吉の想い
「はい、様子を見に行かせた者によりますと、例のあんず入り羊羹がとても評判になって、お客が途切れないそうですよ。
その場で食することも出来ますし、持ち帰れるような販売もしているそうで、買って帰る人もいて、とにかく今、安土城下で一番評判じゃあないでしょうか。
秀吉様はご存知なかったですか?」
「ああ、俺は何も…光秀あたりが知っているかもしれないな。
明日、聞いてこよう」
「さようでございますか…おやすみ前に一献ご用意しますか?」
「ああ、すまないが頼む」
酒を用意してもらい、月を見ながら盃を傾ける。
空はうす曇りで月は見えない。
ふと、舞の暖かい笑顔を思い出した。
自分を呼び掛ける時の優しい声。
舞の甘い香りを思い出す。
そして、秀吉のからだがふわりと熱を持つ。
しかし、その想いに蓋をして、酒に紛らわせる―
それにしても竹の話しでは、葉月、あいつ、大丈夫なのか?