第28章 春のこと
「どうしてそんなに物の流れについて詳しいの?」
質問された春は、一瞬表情を固くする。
「詳しいって思うかい?」
うん、と葉月は頷く。
「豊臣様に関係ある、あんたには知られたくなかったんだけどね」
仕方ないか、そう言って春は自分の事を話し出した。
-もともと父親が足軽大将と、中級の武家の娘だった。
-母は織田信長の母に仕えていた侍女で、自分は小さいときは、女童(めのわらわ)として織田家を出入りしていたと。
-そのうち、ある戦で父親は死に、跡継ぎがいないため、母と二人である村に移り、百姓として生活し、自分はその村の若者と夫婦になり、母は病で死んだ。
-夫となったおとこは戦で死に、まだこどももいなかったため、店を構える別なおとこの後添えとなり、そのおとことの間にようやく息子を設け、幸せを掴んだ。
-最初の夫が死んだ戦は、秀吉が総大将を努めた戦だった。
「そう、だよね…戦に出陣する人達は、総大将の差配一つで命が変わっちゃう事もあるんだ、ね…」
戦争を直接知らない葉月は何と言っていいのかわからない。
「春さんは…秀吉様を恨んでるの?」