第28章 春のこと
とりあえず茶屋で、お茶と団子の他に、お茶と羊羹の組み合わせも出してみることにした。
「春さん、ようやく店を開けられるようになったのかい?」
顔見知りの商人が声を掛ける。
「ああ、まだだけど手伝いが入ったんだよ。
その子が働いてくれてね、店を開けられるようになったのさ」
「へぇー良かったじゃないか。じゃあ後で寄るよ」
「待ってるよ」
二人の会話を聞いて、葉月は春に言う。
「春さん、お店開けるの、待たれてたんだね」
「そりゃそうさ。私の団子は他のところより美味しいからね」
「お団子が売れてるなら、私の羊羹を売り出す必要無いんじゃない?」
掃除中の葉月は、腰掛けを拭きながら、春に言う。
「それは違うよ。一つ名物が増えれば、物の流れがその分活発になる。
あんたの羊羹がもし名物になれば、これを求めて他から買いに来る人が増えるだろ。
そうしたら羊羹だけじゃなく、他のものを売り込むきっかけにもなるんだよ」
流通の仕組みを理解している春に、疑問が沸く。
何故、ただの町人でありながら、こんなに流通に詳しいのか。
そうだ。葉月が未来から来た話も信じてくれた。
「ねぇ、春さん」
葉月が問い掛ける。