第25章 三成の気持ち
『それこそ、あれ、だよな』
内心、秀吉はひっかかる言葉を見つけ、しかし、飲み込んだ。
三成はそんな秀吉の姿を見て、きょとんとしていた。
秀吉はきょとんとしている三成に、その感情が何であるか教えるかどうか躊躇した。
だが、黙っていてもどうにもなりそうにないので、ある程度は教える事とする。
「三成」
秀吉はため息をひとつつくと、自分の部下に教える。
「葉月の姿だけは目によく入るんだよな?」
「…はい」
真剣な表情で秀吉を見つめる。
「その感情を言い表す、良い言葉があるのは知らないか?」
「…言い表す良い言葉?」
紫の瞳が揺れる。
「本には、そういう事は書いてありませんが…」
「…普通、そこまでは書いてないだろうな」
動揺したように三成は頭を左右に振る。
「なんでしょうか、この感情は…」
半ば呆然とした表情でつぶやく。
「まぁ、葉月も相当鈍いようだから」
「…?」
『三成が、葉月のことを気に入ってるようだが』
と、前に葉月本人に、三成が気に入っているらしい事は伝えてはいるが、あの様子では葉月は他の者より少し気に入られてる、という程度の認識しかないだろう。
この鈍い者同士、どうすりゃ良いかな、と話しながら頭をひねる秀吉だった。