第191章 懐かしい時代
「そういう訳にはいかないだろ。この子は石田様のご嫡男で将来のお跡継ぎだし、私たち庶民とは違う身分なのだから」
「…そっか…」
春の言う事に間違いは無い。
この時代は身分がわかれていて、武士の子は武士である故、どれだけ小さくても町のひとたちからすれば様付きで呼ばれる身分なのだ。
「戦国は身分がきっちりしているね…」
「あんたの時代はそうではないのかい?」
春に問われ葉月は頷く。
「士農工商…身分差はないよ。それにそもそも武士はいないし」
苦笑する葉月に春は大きく息を吐く。
「そうかい…武士はいないのか…それにしてもまた不思議な恰好もしてるねぇ」
動きやすいようにジャージの上下と運動靴を履いている葉月の姿を春は眺める。
「動きやすいよ、これ」
片足を座ったまま膝より上にあげる葉月を見て、春はおやおやという表情を見せる。
「そうみたいだね。着物でそんな事をしたらはしたないよ」
「着物も普段は着ていないからね。特別な時のものなんだよ、着物は」
着物事情まで知って春は目を見開く。
「おやまぁ、未来では着物は着ていないの?」