第190章 別れ
その時、晴れていた空が急激に曇ってきたのに気付く。
「あ、来るよ」
葉月の声に全員空を見上げ、葉月は成を父親から受け取り自分の付けていた抱っこひもの中にすっぽりと入れ、一人で離れて木の下に立つ。
「早くみんな、離れて」
葉月はそう言って自分と成以外は木から離れるように言う。
「…葉月…成ちゃん…」
母親がやはりというように近付こうとするので、弥生と富谷で押さえる。
そしてワームホールが開く現象の雨が降ってきた。
雨はあっという間に粒が大きくなり、父親は持っていた傘をさす。
「…葉月…成ちゃん…」
母親はもう一度雨音にかき消されまいと大きな声で呼ぶ。
「…葉月…成…」
父親も傘をさしたまま絶叫する。
「…ありがとう…」
葉月が叫ぶ。
そして。
木に向かって雷が落ちる。
周辺が稲光で真っ白になり、全員顔を背けた。
瞬間、雨が降っていたとは思えない程の晴れ間が出て…
おそるおそる木の方向を見た弥生たちの前から、葉月と成が消えていた。