第189章 出発
車を駐車させると全員車から降り、葉月はポケットに入れていたスマホを弥生に渡した。
「おねえちゃん、これ、解約してあるから本体だけ」
「わかった。写真データだけ残ってる?」
受け取った弥生はスマホを見て、写真だけ残っているのを確認した。
「うん、産まれた時からの成をいっぱい、ね」
途端、母親がチャイルドシートからおろした成を抱き締め、号泣する。
「成ちゃん…もう…会えないのねぇ…元気でね…寂しいわねぇ…」
成は状況がわからないのできょとんとしたままで、母親のその姿を見て葉月も堰を切ったように涙を流す。
「おかぁさん…ごめんなさい…」
母親に抱き着いて二人で泣く姿を見て、弥生も涙を流しティッシュで涙を拭き取っていた。
「ほらほら、成がびっくりしてる。笑って送ってあげようよ?」
涙を拭いて弥生は涙声のまま二人に声を掛ける。
「葉月は戦国へ行ったら日記を書いてくれるんだよ。私たちに生活がわかるように細かく残してくれるって」
弥生は先日二人で話した事を両親や富谷に話す。
「うん…そう…みんなに私や成がどういう生活を送るか…わかってもらえるように…日記を詳細に書くね…」
涙を拭きもせず、葉月は決めた事を伝え、自分のこれからの生活がどういうものであるか記録を付けるから、いつかそれを見て欲しいと頼んだ。