第188章 安土で待つ
「あ…いいえ、伝えていないはずです。あの…葉月さんが確実に戻ってくるかどうかわからない状況で、三成くんに精神的に負担をかけさせたくないので…」
舞が答えると信長は頷く。
「それなら三成には教えるな」
「わかりました。いってきます」
襖を閉めると舞は手にしたものを部屋へ置きに行き、春の茶屋へ向かった。
「舞姫様、ご友人がお待ちですよ」
春が声を掛けてくれ、奥から佐助がひょいと顔を出した。
「やぁ、舞さん、来ると思ったよ」
「佐助くん、来てたの?」
目を丸くする舞に佐助は表情を少し緩める。
「そりゃあね、俺の計算が正しかったという証明も兼ねてね」
「あ、そうね…」
返事をする舞に、佐助は春に舞の分の茶と菓子を注文してくれる。
「奥で待たせてもらおう、舞さん」
「うん、春さん、失礼しますね」
「はい、どうぞ」
春に了解を得ると、佐助と舞はその時を待つ事にする。
「葉月さん、無事に戻って来られますように…」
舞は心の中で願うのだった。