第188章 安土で待つ
「どうした、舞。落ち着きが無いな」
信長に言われ、隣で縫い物をしていた舞はいつもとは違う様子を見せていた事にようやく気付く。
「…あ、すみません…」
「何があった?」
信長は手にしていた文を文机に置き、脇息に寄りかかると舞を流し見る。
「はい…あのぅ…葉月さんが戻ってくるのが、確か今日だったと…」
「葉月…三成のところの娘か?」
「はい、そうです」
返事をすると、信長は途端に大きく息を吐いて舞に言った。
「貴様、何をここでぼんやり縫い物などしている。さっさと迎えに行けばいいだろう」
「えっ…」
信長は目を丸くする舞へ、きっぱりと言い切る。
「ここに居ても心ここにあらず、といった体ではないか。そんな貴様に居られても、俺も集中出来ぬぞ」
信長に言われ、「わかりました」と舞は手元を片付けると、「それではいってきます」と言い信長の部屋を出る。
「舞」
出る前に信長に声を掛けられ振り向く舞に、笑みを浮かべた信長は言った。
「三成は今日だと知っているのか?」