第187章 富谷の挨拶
「どういうことだ?」
父親も出てきてむっすりと富谷を見やる。
「挨拶が遅れて申し訳ありません。実は弥生さんとお付き合いをしていまして」
疲れた顔のままではあるものの、富谷は両親へ向かって頭をさげた。
「…は?え…弥生、そうなの?」
母親が驚いて声を荒げる。
「そうだよ」
弥生はしらりと頷き、富谷は言葉を続ける。
「ついでに言いますと、弥生さんと結婚したいと思っています」
「…は?え…弥生、そうなの?」
全く同じ言葉を母親は口に出した。
「そうだよ。まぁこっちは葉月の事が片付いてから言おうと思ったんだけどね」
弥生は面倒くさそうに言うものの、両親は富谷へ問う。
「こういってはなんですけれど、トミーさんところは開業医ですし、同じ職業や医療関係のかたとご結婚なさるのではないですか?ご両親もそう思われていらっしゃいませんか?」
「うちはそれについては問題無いですね」
さらりと富谷は答え、疲れた顔の中に笑みを浮かべて言う。
「兄がいますけれど、兄の奥さんの家も開業医で、兄はそちらを継ぐ事になっています。だから実家はぼくが継ぎます。院内のことは看護師がいますし、むしろ弥生さんのように事務的な事が出来るかたのほうが、富谷家としては言い方は悪いですが好都合です」