第187章 富谷の挨拶
富谷も心配して非番明けでありながら、やってきた。
「いよいよ、だね」
ほぼ徹夜勤務で疲れている表情でありながらも、反対に葉月や弥生を気遣う。
「富谷さん、疲れてるのにありがとうございます」
葉月が礼を述べるが、反対に驚いていたのが両親だった。
「どうしてトミーさんの息子さんが、葉月の事を知っている…?」
確かに出産時に破水した葉月を、冷静な対応で病院へ手配したのは富谷だから顔は見知っている。
更に弥生と同じ大学だったから知り合いで間違いはないが、特別な仲だと聞いた事もなく、なので何故今の状況で彼が現れたのか戸惑いの表情を消さなかった。
「富谷くんも葉月の件で絡んでるのよ」
弥生がばさりと一言伝える。
細かい事を説明すると戦国時代の富弥の事まで言わなくてはならず、ややこしくなるのでそのあたりは言わない事にした。
「葉月の件ってまさか戦国うんぬんって知っているの…?」
母親が驚いて問うと弥生は「そうよ」と軽く答える。
「私だけではわからない部分もあってね、ちょっといろいろ手伝ってもらってたんだ」
「それにしても、他人様にこんな夢のような事を話したなんて…」
母親の咎めるような言葉に、弥生は「あー」と後頭部をがり、と掻いた。
「でも、全くの他人ごとでもないんだよね」