第186章 会話
弥生も口を開いて援護する。
「おとうさん、あのね、葉月の言ってる事には嘘は無いよ。パラレルワールドってわかる?この世界と並行して動いている、違う世界のこと。葉月の行った戦国時代は、私たちの世界の戦国ではなくて、パラレルワールドの戦国時代なんだと思う」
「…そうしたら、歴史上、葉月と成は存在しないことになるじゃあないか?」
「そうだけど…でも私は葉月に言ったの。どうなるかわからないけれど、戦国へ行ったら日記を残せって。どこかでここと交差するかもしれない、私たちが葉月が書いた日記をどこかで展示されていて、それを目に出来るかもしれない。成の成長もわかるし、当時の生活もどんな状況かわかる。だから細かくいろんなことを書いて、と」
弥生の言葉に葉月は頷く。
「おとうさん、今日なんですよ、葉月が戦国へ行けるのは。私たちは見送ってあげましょう。葉月の決めた人生を邪魔してはいけないんです」
母親に言われ、父親はばんと箸をテーブルに叩き付け、食卓から去ってしまう。
「…おとうさん、やっぱり受け入れてもらえそうにないか…」
弥生の言葉にそれでも母親は頭を左右に振った。
「本当はわかっているの。でも過去へ行って葉月と成が幸せに暮らしていけるかわからないから、心配で反対しているの。それはわかるでしょう?」
母親の言葉に葉月は言う。
「ワームホールが開くところまで、おとうさん、一緒に行ってくれるかな…」
「反対だと言いながらも別れの場所になるなら、一緒に行って見送ってくれるはず」
母親に言われ葉月は「時間まで成と一緒にいたほうが良いよね」と母親に成を託す。
ごはんを食べた成はご機嫌で母親に連れられ、両親の部屋へ遊びに行く。