第185章 さよならの朝
ワームホールが開く朝がきた。
「この生活も今日で最後…」
起きた葉月はしみじみと部屋を見回し、窓の外を眺める。
天気は快晴までいかないが、雲も多くはなく、まず晴れと言っていい天気だろう。
「この空気…いつか忘れるんだろうけれど、今は覚えていたいな…」
独り言ちて葉月はまだ眠っている成の顔を眺めた。
「成…いよいよこの時代ともさよならだよ…そして成のおとうさんのところへ行くんだよ…」
起きて普段着に着替えると、まだ眠っている成を置いて洗面にいき身支度を整える。
「この鏡を覗くのも、この化粧品を使うのも最後か…」
そう思うと何もかもが愛おしく、葉月は丁寧に化粧水を顔にのせた。
身支度を終えると成はそのままで下へ降り、朝食の支度を始める。
「朝ごはんを作るのも今日で終わり…」
だからなのか、いつもより丁寧に作ろうと気持ちが入る。
一通り作り終える頃に成が起きたと言わんばかりに上で叫び出す。
「成、お待たせ」
急いで上に戻り、成をベビーベッドからおろし着替えさせる。
「おじっ、おばっ」
葉月の両親である祖父祖母に会わせろ、と言うのもいつもの事なのだ。