第184章 ボールペン
「きみ、あの時のボールペン、まだ持ってるんだよね?」
佐助が富谷から持ってきてしまったボールペンの事を問うと、富弥はこくりと頷く。
「この間お二人がきた時、返す事も言われてないので、持ってます、はい、これ」
懐に手を入れボールペンを取り出して佐助に渡す。
「悪いね。この時代のものでないものを、普通に置いておくわけにはいかないから」
佐助は受け取ったボールペーンを自分の懐に仕舞う。
「あのぅ、やっぱり先の時代のものは、置いておいたらいけないんですかねぇ」
富弥がちょっと納得出来ないような表情で問うので、佐助が答える。
「この素材は遠い将来まで残ってしまうんだ。そうすると、未来の時代でこの時代の遺構を発掘した時にボールペンが出てきたら困るから、未来のものは処分する事にしているんだ」
佐助に言われた事で富弥は納得する。
「あぁ、そういう事ですかぃ。それならよくわかりました」
「気に入っていたみたいだから申し訳ないけれど」
佐助がもう一度謝ると、富弥はいやいやと首を左右に振った。
「そういや…はっきり日にちはわかっているんですかぇ?その…未来から戻れるのは…」
富弥は話題を変え、葉月の事を聞く。
「あと、少し、よ。戻るとしたらこの茶屋の近くに戻るみたいなの」
舞は人差し指を顔の前に立て小声で言うのは、確実な事が言えない事から、春を含む他のひとたちに知られたくないという事からだった。