第183章 前夜
母親の意外な申し出に二人は驚く。
「見送りって言ったらおかしいけれど…葉月と成ちゃんの姿を最後まできちんと見送りたくてね…おとうさんも反対だけど、見送ってもらわないと、余計に後悔するだろうから」
母親の様子から、母親は完全に腹をくくったようだった。
「…母は強し、だね…」
母親の姿を見て弥生は言う。
「肝がすわると何より強い。葉月も戦国へ行ったら、そういう風にならないとね。なんてったって戦争ばかりの時代へ行くんだから、いつなんどき、何があってもおかしくないんでしょ」
少し茶化すように言う弥生に、葉月は少し笑う。
「わかってる。まだ腹はくくれてないかもしれないけれど、成を守っていかなきゃいけないし、領地とか家臣の人たちとかまだよくわからないけれどそれだけじゃないし…」
「そうか、一応城持ちだもんね、石田三成は」
弥生が言いたい事はわかった、という表情をする。
「じゃあ礼儀作法とか大丈夫なの?」
母親が今更だけど、と聞いてくる。
「それについては豊臣秀吉の女中さんから習ってるから大丈夫」
「そういえばあの豊臣秀吉の養女になってるんだっけ?すごいよね、あの豊臣秀吉だよ?」
弥生に言われ、母親も少し笑うものの、すぐ真面目な表情になって問う。
「でもすごいおんな好きだって史実では言うけれど、どうなの?」