第183章 前夜
「葉月、いいかしら?」
外から母親の声がし、二人は顔を見合わせるところに、母親が部屋に入ってきた。
「あら、弥生もいたのね」
母親は入ってきた部屋の隅に座ったので、二人もその場で座った。
「…明日、なんでしょう?」
しばらくの沈黙の後、母親は言いにくそうに切り出した。
「うん…明日、行くよ」
葉月も言葉少なに答え、弥生が母親に聞く。
「おとうさんはやっぱり知らない…よね…?」
「…知らないというより知らない振りをしているのよ。明日なのは知ってる」
母親は少しためらいながらも事実を伝える。
「…やっぱり明日、おとうさんに外に出るなって邪魔されるかな…」
葉月がつぶやくように言い、母親はそれには答えず違う事を聞いてくる。
「その…何て言ったっけ…戦国時代に行くなんとかってものは、この近くに出るの?」
「あ、ワームホールね…そんなすぐ近くじゃないよ。葉月が以前剣道の段審査に出掛けた場所の近くだから」
弥生がすぐ気が付いて言うと、母親は一瞬ためらって言った。
「おとうさんを説得するから、わたしたちもそこへ一緒に行ってもいい?」
「おかあさん…」