第183章 前夜
いよいよ翌日、ワームホールが開く日にちまできた。
「全部支度は出来たの?」
弥生が葉月の部屋に来て、最終確認をする。
「うん、おねえちゃんが言うように、とにかく薬は少しずつ買い足して用意したよ」
手元の鞄の中を見ると、ぎっしりと薬の箱が詰め込まれている。
「着替えとか持って行ってもしようがないし、なるべくここのものは持って行かないようにしないとね」
「ま、それはそうね。発掘したらスマホが出て来たら困るしね」
肩をすくめる弥生に、葉月は少し笑い、そして笑みを消して言った。
「とうとうおとうさんには明日だって言えなかったな…」
「…それは仕方ないよ。おとうさんは反対一辺倒だしね」
大きくため息をつく葉月に弥生は仕方ない、と励ますように言う。
「ちゃんとお別れはしたかったんだけどね…」
葉月が言う事に頷きつつ弥生も言う。
「もう、それは仕方ないよ。自分で決めた事なんだからおとうさんのことは気にしちゃ駄目だよ。こっちの事は気にしないで、自分と成の事だけ考えなさいよ」
「うん…わかっているよ…わかっている…」
何度も同じ事でやり取りをし、両親の事を思うと葉月がためらうのもよくわかる。
しかし、親より愛する三成を選んだのも葉月本人だから、励まして行かせてやるしかない。