第182章 間もなく
葉月が戻れるワームホールが間もなく開く、という頃、佐助が春日山から安土へやって来た。
「やぁ、舞さん、元気だった?」
いつものように天井裏からひょっこり顔を出す佐助に、舞はくすくす笑いながら降りてきて座るように勧め、茶と政宗が作って差し入れてくれたという干し柿を出すと、佐助は目を丸くして感心する。
「へぇ、政宗さんは干し柿も作ってしまえるんだ。武将でありながら料理も上手で器用なんだな…」
自然な甘さの干し柿を口にして、佐助は「美味しい」を連発し、後で春日山に帰る時に政宗から土産に干し柿をもらったのは別な話し。
「そういえば、春日山からこっちに来るのに、何て言ってきたの?」
「あー、謙信様に言っても通じないからねぇ、置き手紙して幸村に押し付けてきた」
さらりと幸村に謙信を押しつけてきた、と答える佐助に、舞は呆気にとられるものの、佐助が身近にいてくれるのは大層心強いので、舞は内心「幸村、ごめんね」と謝りつつ佐助に聞く。
「ワームホール自体はどの辺に開くかわかるの?」
「あぁ…たぶん、春さんの茶屋のあたり。最初に葉月さんがこっちに来たところと、ほぼ同じところだと踏んでる」
「戻れるかなぁ…戻ってくるかなぁ…」
「さぁ…後は葉月さん次第だからね。現代のほうが安全に暮らせるから、あっちでの生活を望めば来ないだろうし…」
「三成くん、葉月さんに会えるかどうかわからない事もあって、緊張しているみたいでね、いちおう集中して本を読んでるようなんだけど、本がさかさまになっていて全然頭に入ってないみたい」