第181章 別れの準備
弥生は目を細めてきょとんとする成に続けて言う。
「違う歴史の中にいるなら、同じ歴史を作らないでね。きっと未来にいる私たちは、あんたたちが最後まで幸せでいる事を望むだけだから」
声が震えて弥生の目から涙がこぼれ、葉月も一緒になって泣き出す。
「おねえちゃん…」
「生きて、不幸にならないように…私たちが望むのは…幸せに生きて…それだけ…」
「うん…」
姉妹が泣くのを、成はじっと見ているだけだった。
「…もう準備は完璧なの?」
ひとしきり泣くと、振り払うように弥生は聞く。
「…うん…持って行くものは用意した…」
「…そう…もう…すぐ…だもんね…」
しんみりした表情から、途端毅然とした様子に弥生は変わる。
「当日はワームホールの出るところへ私が付き添う。そしてあんたたちがいなくなるところを、私が見送るから」
「うん、わかった」
そして葉月は机に向かうと、引き出しから封筒を二通取り出した。
「おとうさんとおかあさんへの手紙。今迄のお礼と…戦国へ行く事の謝罪…なんだ…」
封筒を引き出しにしまうと、また葉月と弥生は涙をこぼしてしまった。