第179章 安土の広間
「ほぅ。では佐助の働きで件の者は、戦国へ戻って来られそうなのか」
脇息によりかかり、信長は杯を手にしながら舞の言を繰り返した。
一緒に話しを聞いていた三成は、ぱああと目を輝かせている。
「舞様、本当ですか?佐助殿の働きで葉月さんが戻ってこられそうなのですか」
三成のほうを向いて舞は頷く。
「佐助くんが言うには一応現代に状況を知らせる事は出来たみたいなの。後は葉月さんが何事もなくワームホールの開く日を迎えられれば良いんだけどね」
「何か問題があるのか?」
政宗が腕を組みながら聞き、舞は口ごもりながら答える。
「あ、ほら、葉月さんのご両親がね…やっぱり大切な娘が時を越えて戦国時代へ行っちゃったら二度と会えないでしょう?それに産まれているだろう可愛い孫もいるわけだし、手離さないかもしれないかな、と思って…」
「それを言ったら、貴様は何も後ろ髪引かれる事無くこちらに来たというのか?」
信長がまっすぐに舞を見つめる。
「はい。私は早い時期に両親が別れたせいで、祖父母に育てられたんです。その祖父母も既に亡くなっていて、現代に残るしがらみは何も無いんです」
舞の現代での身内の薄さを初めて知る信長たちに、舞は頭を左右に小さく振った。
「もしかしたら…私の家族について何か考えているのかもしれませんけれど、両親の代わりに祖父母がいっぱいの愛情をくれたので、私は祖父母と育って良かったと思っているので、気にしないでください」
すると家康がちくりと言う。