第178章 富弥の好奇心
「ずいぶん質問されていたみたいだね」
帰り道、佐助に舞が聞くと、あまり表情を変えない佐助が小さく苦笑した。
「彼はかなり好奇心旺盛だな。ボールペンの素材まで最後は聞かれたよ。プラスチックなんてどう説明していいかわからないから、ちょっと困ったけどね」
「ふふ、そうなんだ。佐助くんが困るなんて珍しいね」
歩きながら舞は微笑み、佐助は持っていた紙束をぱらぱらとめくり、最後の一枚で手を止める。
「無事に弥生さんに情報は渡ったみたいだね」
ほら、と一箇所を舞に見せると、そこには富谷の字らしく「違いがわかった。ありがとう」と記してあった。
「あ、本当だ。葉月さんの事、三成くんも待ってるんだよね。ワームホールと共に戻って来られると良いんだけど…」
舞の言葉に佐助は励ますように言う。
「大丈夫だ。葉月さんならおこさんを連れてきっとまた戦国に…三成さんのところに戻ってくるよ」
「うん、そうだね。佐助くんもわざわざ安土に滞在してくれてありがとう」
「とりあえず、情報が渡ったのがわかったから、俺は一度春日山に戻るよ。偵察としてこっちには来てるけれど、そろそろ幸村が謙信様の相手に疲れているだろうからね」
佐助の言葉に舞は、姫鶴一文字を片手に幸村を追い駆ける謙信を想像し、くすりと笑った。
「春日山は賑やかそうだね」
「あぁ、何だかんだ言っても、俺は春日山の一員なんだって戻る度に思う」
安土城のすぐ近くまで舞を送ると佐助は片手を挙げ、「じゃ、またワームホールの開く頃に来るから。にんにん」と言って去って行った。