第178章 富弥の好奇心
「夢の中で俺とそっくりなやつに会いましたぜ?」
富弥は店にやって来た佐助と舞に言う。
「会えたんですか?」
佐助が問うと富弥は頷いて、奥へ行ってすぐ紙束を手に戻って佐助にそれを渡す。
「佐助様から預かっていたものですよ。俺と同じ顔してへんちくりんな恰好したやつが、同じように紙を大量に持っていて、なにやら書き込んでましたぜ」
富弥はそう言ってボールペンを二人に見せる。
「墨をつけなくてもそのまま書ける不思議な筆を、俺、持ってきてしまったんですよ」
「っ…それ…ボールペン…」
佐助が小さい声で答えると、即座に富弥は反応して問う。
「中に墨が入っているから、そのまま書けるってあの男が言ってましたけど…墨はいつどうやって中に入れるんですかぇ?」
ボールペンの作りについて、好奇心を露わにする富弥に、佐助は丁寧に作りを説明し出す。
その間、客は来るので舞が店を手伝っていた。
「まぁまぁ、舞様にお手伝いいただいて…本当に富弥は何をしているのやら」
羊羹を切りわけながらぶつぶつと春が言い、舞は茶を淹れながら穏やかに伝える。
「怒らないでくださいな。富弥さん、葉月さんが戻るために重要なお仕事をしてくれたんです。佐助くんがだから、彼の好奇心に応えて、質問に答えているんですよ」
「舞様がそうおっしゃるなら仕方ありませんけどねぇ…」
不承不承といった体で春が肩をすくめ、舞は「こちら、運んできますね」と盆を持って客へ茶と甘味を運んでいった。
まだ、佐助の説明は続いているようで、富弥は興味津々で未来の文具の作りについていろいろと質問していた。