第176章 プロポウズの返事
富谷が行くレストランに富谷と弥生がテーブルを挟んで座っていた。
「…俺と結婚する?」
富谷が断わられてきたプロポウズを今になって受けるなんて、と不思議そうに弥生を見ると、弥生は大きく息を吐いて断言するように言った。
「…正直に言います。本当は未だに決断は出来ていないの。でも葉月と成を戦国時代へ帰すと、成を溺愛している両親が気落ちするのがわかっているから、私が富谷くんと結婚すれば良いんだって思おうとしているのかもしれない。だから…」
続きを言おうとする弥生へ人差し指を突き出す富谷は、珍しい満面の笑みを見せて言う。
「どんな理由でも良い。それに俺が嫌いな訳じゃないだろ?」
「それは…そうだけど…」
ためらわず、はっきり嫌いではない、と答える弥生へ、富谷は一人頷く。
「いいよ、葉月さんと成くんを戦国へ行かせるためでも。そういう理由の結婚が有っても良いさ。俺の事はこれからもっと知ってくれれば良いしね」
その言葉に弥生はふぅと息を吐いて以前言った言葉を、また、言った。
「富谷くん、ほんと、貴方、頭良いのか悪いのか、わからない…」
それには「はは…」と軽く笑って富谷は言う。
「仮にも医者だからね、頭は悪くは無いと思うけれど?」
その言葉に弥生はふっと小さく吹き出す。
「ずいぶん己惚れてるなぁ。勉強は出来るかもしれないけれど、それ以外はどうなのって事で聞いたんだけど?」
弥生に言われて富谷は首を傾げる。