第173章 戦国時代で起きたこと
話しを聞いて目を丸くする母親。
「ああ、まぁ、そうだよね。でもお手伝いの人に、武家の娘としてのたしなみを叩き込まれたんだよ。和室の襖の開け閉めから教わったんだから」
葉月の言にそうなの、と母親は驚く。
「今は普通に立ったまま襖を開けるものねぇ。あれ、でしょ?よく旅館の女将さんが座って部屋の襖を開けて入ってくる姿、ああいうのを習ったって事でしょう?」
「そうだよ、教わっていたけれど、細かいところが違っていてね、徹底して直されたからね。他にも武家の娘としての必要な事を、まだ全部じゃないけれど教わっていたんだ」
結婚の準備もしつつあった中、妊娠がわかったこと。
勿論喜ばれたものの、ある時舞と出掛けた時にワームホールが開いてしまい、一緒に現代に戻されてしまったこと。
ざっと話した葉月は付け足す。
「最初は上杉って名字に困ったけれど、結果として良かったよ。だって上杉じゃなかったら豊臣秀吉に捕まっていなくて、そうしたら屋敷にも連れて行ってもらえなかったから、どうやって生きて行くのかわからなかったからね」
「話しを聞く上では、大きな危険とか苦労はしてなかったみたいね」
母親がほっと息を吐くのがわかり、葉月は頷いた。
「うん、それは運が良かった。それでこっちに戻ってからは今迄の通りだよ」
複雑な表情を見せたまま母親は言う。
「だいたいわかったけれど…やっぱりおとうさんも私も葉月と成ちゃんが、違うところへ行くのは嫌だわ。わかるでしょう、それは。せめて外国ならわかるけれど、時代が違うなら、もう二度と会えないのだし…戻りたいって言うのは考え直してくれないかしら?」