第173章 戦国時代で起きたこと
母親の真顔に葉月は本当に知りたいんだ、という思いに気付き、「わかった」と口を開いた。
剣道の段審査会場に向かう途中、大雨に降られ雷に打たれ、気付いたらそれまでのところと違う場所に居たこと。
倒れていたすぐ近くの店でトラブルが起き、その店の主のおばさんを助けたところ、豊臣秀吉が相手の武士を捕まえ、更に自分の名字が上杉である事から疑われ、豊臣家に連れて行かれたこと。
「どうして上杉だと疑われるの?」
案の定、母からの質問に自分もわからなかったな、とちょっと苦笑して葉月は教える。
「豊臣秀吉は織田信長に仕えていたでしょ。織田信長と上杉謙信は敵だったから、うちの上杉って名字を聞いて、私を上杉謙信の身内のものだと思ったんだよ」
「へぇ、全然関係無いんだけどねぇ」
母がちょっと口をヘの字に曲げるのをそのままにし、葉月は話しを続ける。
関係無いと言っても信じてもらえず、豊臣秀吉の屋敷に連れて行かれ、見張られながら屋敷の中で手伝いをして過ごしていたこと。
そしてある時、あんず入り羊羹を作ったところ何故か気に入られて、更に織田信長が直々に自分に会って敵かどうか見極める事となり、安土城へ行ったこと。
織田信長から結局敵でないと認識され、二度たまたま会った石田三成に気に入られ、一緒に出掛けるようになってやがて恋人になったこと。
町娘なので武士の石田三成とは結婚しても側室扱いになってしまう、けれど、三成は自分を側室にするつもりは無いと言ってくれ、豊臣秀吉が織田信長に話しをして豊臣秀吉の養女となり、豊臣の姫として三成と結婚が決まったこと。
「葉月があの豊臣秀吉の養女になって、姫として結婚するって、あらまあすごいわねぇ」