第172章 母親の気持ち
「成はいっぱいごはんを食べて偉いねぇ」
成はやはりにこにこして、「早く次をちょうだい」と言わんばかりにテーブルを叩く。
「はい、成、次はこれね」
そうして決まった量を全て口に入れた成は、やはりもっとくれ、とほげほげ言う。
「離乳食はここまでね。あとは授乳だから部屋へ行くよ」
「ほげぇ」
もっと離乳食を食べたいと言わんばかりな成の様子に、葉月もさすがに苦笑する。
「食器は片付けておくから、早く成ちゃんに授乳してあげなさい」
母親が声を掛けてくれたので遠慮なくお願いし、葉月は成を抱っこし部屋へ戻った。
二人が戻るのを見て、母親は父親へ言う。
「昨日の話し、本当ですかねぇ」
「本当でも嘘でも行かせないぞ」
「そうですけどねぇ…」
母親は昨夜の態度から少し融通の利きそうな態度になっていたのは、一晩置いて冷静になったのだろうか。
母は複雑だった。
なにせ自分の娘が行方不明になったと思ったら妊娠して戻ってきた。
誰の子が言わないまま出産を迎え、でも、孫のあまりの可愛らしさに父親が誰かどうでも良いと思うようになっていたら、父親は戦国時代の石田三成という武将で約500年程前の時代に孫を連れて戻りたい、そんな話し自体が夢物語としか思えない。