第170章 動ける日
「何って飛行機の真似して遊んでるんだよ」
葉月の呑気な声と、成の喜ぶ笑い声が重なる。
弥生はたぶん、間もなく見られなくなる光景だと気付き、二人の遊ぶ姿を目に焼き付ける。
「…どうしたの?おねえちゃん」
葉月は起き上がり成を下すと、成はハイハイで部屋の中を動き出す。
「…どうしたの?変な顔して」
葉月に言われ、弥生は自分の頬に思わず手を当てた。
「そんなのはとにかく、大切な話しだよ。あのね、ワームホールの開く日にちが、猿飛くんの計算でわかったよ」
「…え…それって…」
「富谷くんが何故か夢の中で、あんたの言っていた戦国のそっくり富弥くんに会って、話しも出来たんだって。だから猿飛くんから式を書いた紙を借りて持って来いって言って、戦国の富弥くんは借りて持ってきたの。富谷くんは私から式を借りて夢の中へ持っていき、また夢の中で式の突き合わせをして、猿飛くんからの計算式のおかげで、開く時期がようやくわかったって事」
早口でまくしたてた弥生に、葉月は聞く。
「それで…いつ、開くの?」
「…2か月後。行くなら時間は、ないよ?」
「…2か月後…戻るよ、成と。三成様が待ってる」
やっぱり戻るんだな、と弥生は肩をすくめた。
「やっぱり戻りたいんだね」