第169章 夢から覚めて
「夢の中で…本当に出会ったんだ…」
弥生は驚きつつ、その書き込まれた式を見入る。
「…ありがとう。これで葉月を戦国へ戻してあげられる」
弥生の真剣な顔に、富谷は息を呑み、そして問う。
「…あのさ、本当に戦国時代へ行かせてあげるの?」
「…どういう事?」
富谷の問いに、弥生は眉をひそめる。
「いろいろな事を考えると、こっちにいたほうが葉月さんには良いんじゃないかって。戦国時代なんて毎日戦争のようなもので、いつどうなるかわからない。それに葉月さんの相手は石田三成って聞いたけれど、石田三成って関ケ原の戦いで豊臣秀吉に負けたんだろう?そして捕まって晒し首になったやつだって。そんなやつのところに戻ったら、葉月さんはともかく、こどももおとこである以上、殺されるぞ?」
富谷の話しを聞いて、しかし、弥生は言う。
「うん…富谷くんの言う事、わかる。でも、葉月の話しを聞いていると、どうも私達の知ってる歴史と違う歴史の中にいるみたいでね」
「違う歴史…?」
「まず年齢が歴史と違うみたい。明智光秀って人は本能寺の変の頃には中年男性なのに、葉月が会ったのは20代後半から30代前半の若い男性らしいよ」
「…若い男性…」
それを聞いて富谷は口をへの字に曲げる。
「他の人達も若くてとにかくえらいかっこいいらしいよ?もうそれだけで歴史が違うでしょ。それに武田信玄や上杉謙信も生きているらしいよ?」