第3章 豊臣秀吉
声のほうを横目で見ると、人を掻き分け、いかにも上級武士と思われる印象を含ませた男が近寄ってきた。
サラサラな金茶色の髪の毛に、少したれ目なとび色の瞳。
スラリとした長身。
笑えばとても優しい表情をするんだろうな、と思わせる暖かな印象。
しかし今は、厳しい張りつめた雰囲気をまとっていた。
『…ものすごいイケメン!』
葉月は心臓がばくんと、飛び跳ねるような衝撃を受ける。
「豊臣様だ」
「秀吉様だよ」
周囲の人々の密やかな声が聞こえる。
とよとみ?ひでよし?
聞いた事のある名前だな、と思う間もなく、そのイケメン武士が二人に話し掛けた。
「男と女で立ち回りか?一体どうした?」
それに、と言わんばかりの訝しげな目つきで葉月を見る。
すると年配の女性が、男に突き飛ばされた体勢のまま、話し出す。
「私はここで茶屋をしております。
このかたがいらしたのですが、出したものに難癖をつけ、支払いをしてくれないのです。
そうしたら、あちらのかたが」
と、ちらりと葉月を見て続ける。