第168章 三度目の夢の中
「とにかくここが夢の中なら、目が覚めるまでに片付けなくちゃいけない。悪いが終わるまで待ってくれ」
ボールペンの話しを区切り、また式の確認を始める富谷。
式を一つ違えてると、その後もぽろぽろと違ってくる為、手早く佐助の式を写す必要がある。
富弥もその場に座り込み、わからないながらも、富谷の作業をじっと見つめている。
そんな作業がしばらく続き、作業を終えた富谷はふぅとため息をつき、紙束を急いで両方まとめ、佐助のほうを富弥に渡す。
「ありがとう、おかげで両方の違いがわかったよ。これで俺の時代にうまく持ち帰れば、葉月さんがそちらに戻れるようになると思う。伝えてもらえるかい?」
「勿論伝えます。あのう、それで、そのぼーなんとかを、ちょっと見せてもらえませんか?」
富弥の見つめるのはボールペン。
ん、と富谷は目をぱちくりさせ、どうぞ、と富弥にペンを渡す。
富弥はくるくると回して後ろから見たり、ペン先を見たり、不思議なものと認識していろいろな角度からペンを見る。
「軽いんですねぇ」
「ああ…そう言われればそうだな」
その時。
富谷のからだが何かに強く引っ張られる感じがして、そこで富弥との会話が切れる。
無機質な電子音。
電子音を無意識に止めて、富谷は目を開ける。