第168章 三度目の夢の中
帰宅した富谷は、部屋着に着替えながら眠い目を必死に開きつつ、弥生から借りたUSBからデータを全て印刷する。
そして印刷したデータを持ってベッドへ飛び込み、紙の束を抱えたまま眠りについた。
『今日は眠すぎて、出てこないかもしれないけど…』
一瞬富谷はそう思い、目をつむった瞬間、眠りに落ちる。
そして、眠すぎるはずの富谷の前に茶屋の景色が遠くから近付くように見え出し、到着寸前、その景色は以前のように白く何も見えなくなった。
何かに乗っていたようだが、さすがに想像は出来ず、富谷は到着したその地へ、わからない乗り物から降り、その乗り物もさっとすぐ消えた。
「…富弥、いるのか…?」
降り立った場所から数歩歩くと、白い景色が変わり、先程反転したのと逆に、茶屋の景色が現れた。
「…また、あんたですか…」
呆れた声が後ろからし、富谷が振り向くと、着物姿の富弥が周囲をきょろきょろと見回しながら立っていた。
「しかし、ここ、店の周辺なのに、なんでこんな風に見えているんだ…?」
一人ごちる富弥に、富谷は言う。
「ここは、俺の夢の中だからな…よくここに入って来られたな」
「夢…?ここはあんたの夢の中…?俺はどうやって人の夢の中に入れるようになったんだ…?」
首を傾げる富弥の手に、紙の束があるのを富谷は見逃さず、早速両方の式を付き合わせようと口を開いた。