第167章 計算式
「あれ?ここは…」
一瞬理解不能とばかり呆然とし、そして状況を思い出し、ああ、と声を漏らす。
「そうか、送ってもらったんだっけ、弥生さん、ありがとう」
「どういたしまして。USB渡したから、忘れないで…ん…」
最後まで言わせず、富谷はまた弥生にキスをする。
「今日は食事も出来ず、本当にもう疲れていて、ごめん。また誘うから」
富谷の言葉に肩をすくめて弥生も言う。
「研修医って相当疲れるんだね、目の下に隈も出来てるし、早く家でゆっくり休んだほうが良いよ」
「ありがとう、それじゃ」
そう言って片手を挙げて、富谷は車から降り、家の中に入っていく。
クリニックも同じ敷地内に建っていて、かなり余裕のある家だと思わせられる。
弥生は運転席から富谷が消えるのを待って、エンジンを掛け、この場から家に戻る。
家に戻った弥生は、着替えて食事を摂りに台所へ行く。
「あれ?おねえちゃん、外でごはん食べるんじゃなかったの?」
葉月が食器を洗いながら、弥生の姿に気付いて話し掛ける。
「都合で無くなった。ねぇ、何か食べるもの、ある?」
「うん、煮物なら十分あるからどうぞ。温めるね」
お願いすると、葉月は鍋を温め出した。