第167章 計算式
「それなら、仕事終わったら、病院へ届けに行こうか?」
弥生が提案すると、富谷も同意する。
「ああ、悪いけれど、そうしてもらえるかな。ついでにまた食事も一緒にどう?」
「…食事の後もついてくる?」
からかうような弥生の口調に、富谷はちょっと口ごもる。
「うーん、連勤と夜勤明けで今日は眠いからなぁ…」
弥生はそれで気付き、実務的に話す。
「了解、今日は食事だけね。それじゃ、職場を出る時、電話するから」
そう言って電話を切り、スマホをポケットにしまい席へ戻る。
席につき、資料の山を見て、ふと、弥生は思う。
『眠る時に計算式を印刷したものをシャツに突っ込んで寝る?戦国の富弥という人に会って、猿飛くんが計算した式のものと、内容を全部見るつもりなのかな?』
そう言えば、と弥生は自分の計算式を入れたUSBを取り出すとパソコンへ差し込み、データを別のUSBへコピーした。
そして仕事が終わる時間が来て、弥生は運転して富谷の病院へ向かう。
いつも通り病院の入口付近で富谷は待っていたが、その顔は目の下に隈が出来て眠そうに見えた。
「ちょっと、富谷くん?食事しないで帰ってすぐ寝たほうが良いんじゃない?疲れてるみたいだよ」
「…やっぱり、そう見える?ここのところ、連勤だったし、夜勤も続けて入ったから、かなり疲れてるんだ…悪いけど、じゃ、食事はまた今度にしてもらって、帰っていいかな?」