第166章 富谷と富弥、ふたたび
富弥に聞かれて俺は佐助とやらの名前を出す。
「確か、佐助、猿飛佐助、と言うんだ」
「…佐助…わかりました、俺は知りませんが、舞様に聞いてみましょう」
「ああ、頼む。それで話しは一言、簡単だ。ワームホールの計算式を見せてくれ、だ。その一言だけ言えばよいから伝言頼む」
「言伝も受けました」
富弥は軽く頷き、そして富谷の意識は途切れる。
目を覚ました富谷は、そこは病院の仮眠室だった。
「…また、あいつと会話出来たな…」
ぼそりと起き上がってひとりごちるが、夜勤交代の時間と気付き、急いで起き上がり、白衣を袖に引っ掛けると仮眠室を出た。
『何とかもう一度、あいつに会ってワームホールの計算式を見せてもらおう』
先日、弥生と葉月から話しを聞いた時、富谷には正直言って全く信じられなかった。
-葉月が戦国時代へタイムトリップし、石田三成と愛しあい、産まれたこどもは石田三成の子だという事を。
-タイムトリップは葉月だけでなく、舞という女性、そして猿飛佐助。
-佐助は富谷や弥生と同じ大学の後輩で、更に弥生とは同じ教授の許についていた、天才的頭脳を持っている後輩らしい。
-そんなやつが自ら好んで何故戦国時代へ行ったのか、何故帰ってきたのにまた戦国時代へ飛び込んで行ったのか。
考えつつ歩くうち、交代する医師の姿が見えた為、富谷の意識は切り替わった。