第166章 富谷と富弥、ふたたび
また、富弥の夢か…以前見た景色に俺は頭を軽く振ると、景色が一転して白くなった。
「あれ?またあんたですか?」
そっくりな男、富弥が表れ、おまえから『また』と言われるとは思わなかったがな…
「俺も好きでおまえの前に現れている訳じゃあないけどな」
「ならどうしてですかい?」
「俺もそれは知りたい」
同じ顔の俺が二人並んで腕を組み、うーむと考え込む様子はかなりシュールだ。
しかしお互いこうしていても生産性は無いので、とにかく疑問をぶつけてゆく。
「ところで葉月さんのこどもの父親は、おまえのところにいるのか?子が産まれている事は伝えたか?」
「はい、石田様ですね、石田三成様ですよ。俺が直接石田様とお話しする事は無いのですが、茶屋の主が豊臣様の御殿の女中頭と親しいので、その伝手で伝えてもらいました。たいそう喜ばれ、早く子に会いたいと話したらしいです」
「…わかった、ありがとう。あと、そちらに、そちらに行く為の計算をしていた奴がいるようだが、その人物と連絡はつくか?」
「…どういう事ですか?よくわかりません」
富弥の答えに、ワームホールを開く場所の計算を実際させたという、弥生さんの後輩、佐助の事は知らないらしい。
「それじゃあ頼みがある。葉月さんがそちらに行くために、そちらへ行くための計算式を解読したやつと話しがしたい。何とか探して欲しい」
「葉月が戻るために、計算が出来るやつと話したい…?そんな人知りませんが、名を聞けばわかるかもしれません。名は何と言うか、存じてますかい?」