第21章 織田信長
「誰?」
と思った時には二の腕を相手の両手で掴まれ、腕ごと引き上げられた。
はいつくばっていたからだも起こす事になり、引き上げた相手の顔を見る。
数滴紫を落として混ぜた灰色の髪。
色気を含んだ紫の瞳。
左目の下の泣きぼくろ。
井戸の水汲みを手伝ってくれた、あのアイドル―
「水汲みのアイドル…」
目をパチクリさせてアイドルの顔を見る。
同時に、思わず、他の人には訳のわからない言葉が出る。
「水汲みのあい…?」
アイドルは不思議そうな表情をし、葉月を見る。
「え…と…何でもないです。えーと、何故、こちらに?」
「私は石田三成です」
アイドルは、女中達から聞かされた名を名乗った。
瞬間。
二の腕を掴む三成の手を振り払いのけぞり、さんざん聞いてきた名前に驚いて叫ぶ。
「あああああ!!」
上段の信長、中段に控える秀吉達全員が葉月を見る。