第165章 ビデオ撮影
頭をぶつけた父親も台所へ戻り、成のすぐ斜め前に座り、成の食べっぷりを撮影していた。
「ほげほげほげっ」
早く食べさせろ、と言わんばかりにばんばんテーブルを叩く成に、ひとさじ粥を口に運ぶと、待ってましたとばかりに口をぱくんと開け粥を含む。
おかずもぱくんぱくんと口を開き、なんでも食べる。
「まぁ、成ちゃん、上手ねぇ。ちゃんともぐもぐ出来てるわね」
母親が拍手をしながら成を褒めると、成も褒められているのがわかるらしく、きゃっと喜びながら足をばたつかせた。
「好き嫌いをしないのがえらいよなぁ」
父親も目を細めて、成の食べっぷりを褒めると、また喜んで足をばたつかせる。
小さくしているとは言え、にんじんを食べる成を見て、葉月は思う。
『三成様が食べないにんじんを普通に食べてるなぁ…』
手が止まった葉月に、早く食べさせろ、と成がテーブルをばんばん叩いて催促してきたので、急いで成へごはんを口に運ぶ。
「あ、ごめん。ごはん食べるの好きだねぇ」
葉月が口にさじを運びながら言うと、成は嬉しそうに粥を口にしたまま答える。
「もげっ」
口にしたまま答えるので、ぼろぼろと粥がこぼれ、エプロンのポケットに落ちる。
「あらら、食べながら答えちゃだめだよ。ごはんこぼしてる」
葉月が注意すると、成はこぼしたごはんがもったいないと言わんばかりに怒った。
「ほげー」
「え、何?食べてる時に話し掛けたママが悪いの?」
「ほげ」
間髪入れず葉月のせいでこぼした、と怒る成に呆れる葉月。
「成はしっかりしてるなぁ」
父親と母親は成の成長におおいに喜び、父親は頭をぶつけた事を既に忘れていた。