第164章 富谷の夢
「おまえの事は葉月さんから聞いている」
俺が葉月さんから富弥の事を聞いている事を言うと、富弥はますます目を丸くする。
「え…葉月の事も知っているんですか?」
「ああ、葉月さんからおまえの事を聞いたくらいだからな。信じられなかったが、今、こうしておまえと話していると、信じるしかないと思えるよ」
「葉月は元気なんですか?子は無事に産まれているんですか?」
違う質問をしてくる富弥に、それでも俺は知っている限り答える。
「ああ、俺は話しを聞いただけだが、無事に産まれてずり這いをしているらしい」
「そうですかい…石田様が聞いたら喜びますよ」
一安心したような表情を浮かべた富弥は、そして続ける。
「あんたはどうして俺の前に居るんですか?」
「俺もわからない。ただ、ここのところ、おまえが夢に出てきていた。それを葉月さんに伝えたら、おまえの事を教えてもらった。おまえの事を聞いたら、直接おまえと話しが出来るようになった。それが事実だ」
俺は腕を組み、そして片腕を組むのを外し、富弥へ手のひらを上にして人差し指で差した。
「すると俺は、あんたの夢で話しているという事ですかい?俺もじゃあ夢を見ているって事ですかね」
「おまえの夢かどうかは俺にはわからない。葉月さんは俺はあんたの生まれ変わりじゃないかと言っているが」
「俺の生まれ変わりがあんたですか…」
突拍子もない発言に、さすがに富弥は驚いて言葉を失った。