第164章 富谷の夢
ここは…また、例の夢か…
時代物の小説を読む訳でもなく、時代劇を見る訳でもない俺が、何故か最近見る夢。
俺そっくりなおとこが着物を着て、茶を淹れた湯呑や菓子を乗せた皿を、客らしい人々へ振る舞う。
人々は、大きな箱に布を掛けただけのような簡素な席に座り、座る横に皿と湯呑を置いて、のんびり話しながら菓子を食している。
何かしゃべってるようだが、俺にはわからない。
今迄は。
そのはずだったのに、声が、聞こえる。
「羊羹ください、とみやさん!」
「とみやさん、お茶のお代わりください」
「私にお団子お願いします、とみやさん」
とみや?俺と同じ名、なのか、その、そっくりなおとこは?
そのおとこは人気で、若い娘達から声を掛けられ、菓子を出している。
その間も娘達の視線はとみやに注がれ、やたらモテるおとこのようだな、と俺は離れたところから見ているようで、そのやり取りを見ていた。
そういえば葉月さんから聞いた話し、俺とそっくりなおとこ、とみや…もしかして、このおとこが、葉月さんの言っていた富弥なのだろうか。
俺はどこから見ているのかわからないものの、そのおとこに声を掛ける。
「おまえは…とみや、というのか…俺とどういう関係なんだ…」