第162章 じじ、ばば、成
「ほげえええええ」
「まああ、成ちゃん、痛かったの?」
成が怒っているのは、ずり這いをして家具に頭をぶつけたからだ。
葉月の母親、つまり成のばばが抱き上げ、痛いの飛んで行け、と繰り返しやると、痛いのを忘れたようにきゃっきゃっと喜ぶ。
「成ちゃん、這うのは良いけれど、家具に頭をぶつけないようにしないとねぇ」
ばばが成に言うと、成は手足をバタつかせながらうなるように答える。
「ほげっほげっ」
「うんー?成ちゃんは何を言いたいのかなー?」
「家具が邪魔って言ってるんじゃないか?」
側にいた葉月の父親、つまりじじが言うと成は満足そうにほげほげ言う。
「お、当たりだな。でもな、成、世の中は全ておまえの思う通りには動かないぞ」
「ほげぇ」
「家具を、おまえが邪魔だからと言って動かす事は出来ないからな。だからおまえが頭をあげて、前を見て動けるようになれば、自然と頭をぶつける事は無くなるからな。おまえが成長すれば良いだけだ」
「ほげ」
わかったと言わんばかりの返事をする成に、じじばばの二人は顔を見合わせる。
「あまり気にしてなかったけれど、この子、もしかしたら頭が良い…?」
成はその言葉に、ほげっと元気よく答えた。