第161章 富弥について、話す
「へぇ、ずいぶん人気者のようだね、戦国時代の俺は」
富谷は面白そうに言ってコーヒーカップに手を伸ばした。
「すごく人気者ですよ。富弥さんが顔を出すと、茶屋に来ている女性がこぞって『富弥さん、お団子ください』やら『富弥さん、お茶ください』って名指しですもの。だから茶屋の主のおばさん、町娘さん達が来ると、最近は売り上げ向上の為、と自分は外へ出ないで、全部富弥さんに接客をさせているくらいです」
「茶屋の主は女性なんだ?」
「ええ、でも戦でご主人を亡くしたかたなんです。一人で切り盛りしていたのを私が手伝い出し、私が働けなくなるので代わりに来たのが富弥さんなんです」
「どうして働けなくなったの?」
弥生が横から口を出す。
「うん、三成様と結婚する為に秀吉様の養女になったの。そしたら結婚前に武家のしきたりを覚えないとならなくなってね」
「三成…秀吉…石田三成ともしかして豊臣秀吉の事?」
富谷は出てきた歴史の人物の名前に驚く。
「はい、そうです。三成様はこどもの父親と言いましたよね。三成様は武士ですし、私はずっと町娘の立場だったので、このままでは側室にしかなれないので、秀吉様が信長様に掛け合ってくださって、秀吉様の養女になる事で正室として迎えられる事になったのです」
「そういや、どうして、豊臣秀吉と出会ったのかな?」
富谷の至極当たり前に疑問に、ああそうかと葉月は事情を話した。
「…そういう事か。不思議な縁なんだね。でももしそうなる事が葉月さんに決まっていたなら、不思議でも無いか…そうすると俺も、その富弥という男性の生まれ変わりでもおかしくないような気がしてきたな」