第161章 富弥について、話す
富谷は目を瞬かせる。
「私の知る茶屋の富弥さんと、目の前の富谷さんは、名前も同じ姿も本当に似ていて、同一人物と言っても良いくらいなんです。でも富谷さんは、戦国に行った事もなければ、カフェで働いた事も無い。となると私が思い当たるのは、富谷さんは富弥さんの生まれ変わりじゃないですか?」
いきなりの発言にさすがに弥生も驚く。
「葉月、いきなり何を言うの…!」
「だってそれしか考えられないじゃない。名前も同じだし見た目もそっくりなんだよ?」
富谷は益々目を瞬かせ、しばらく口を結んだままだったが、成程と言わんばかりに頷いた。
「ふぅん、そう思えばそうかもしれないね。戦国時代で生きて、生まれ変わって今、生きている。戦国時代の記憶はないけれど、夢で見たのが俺の前世だったら、そこで葉月さんに会って、生まれ変わってまた貴女がたに会って…何か縁があるのかもしれないな」
思った以上に簡単に同意する富谷に、反対に葉月と弥生は驚く。
「…普通、そんなのわからないって言うもんじゃないの?富谷くん?」
弥生が恐る恐る聞くと、富谷はおっとりと笑いながら言う。
「まぁ、確かにね。でも…目の前に戦国時代へ行った人が居て、俺が知らないけれど行って戻った人も居る。タイムトリップなんて小説や漫画の世界だと思っていたけれど、現実に起きている。なら前世とか過去の記憶とか、有り得ないと思う事が有ってもおかしくないな、と思っているよ。ところで、その戦国の俺は、どんな人物なのかわかる?」
富弥の事を聞かれ、葉月は話す。
「見た目は悪くないのと、茶屋で若い男性が働いているのが珍しいので、町娘さん達からすごく人気があります。ちょっと強引ですけれど、案外素直で真面目なので、茶屋の主である人も富弥さんを頼りにしてます」