第161章 富弥について、話す
富谷はワームホールが開くのを見たのか、聞いた。
「勿論見たよ。本当に消えたからね、二人共。びっくりしたよ。突然雨が降ってきて、黒い雲がどこからか沸いて、二人を包んでその雲が晴れたら、二人の姿は無くなっていたよ」
弥生はそこまで話してまたコーヒーカップを口元に運んだ。
「葉月も一緒に戻る予定だったんだけど、その時おなかの子が逆子と言われていたから、戻りたくても戻れなかったの」
「ああ、そうか…帝王切開か…」
「そう、だから猿飛くんと舞さんが戻るのを、私と葉月の二人で見送ったんだ。目の前で二人が消えたからね、あれはやっぱり驚くね」
富谷は一通り話しを聞くと、大きくため息をついた。
「話しを一通り聞いて、簡潔にまとめようか。葉月さんが本来の歴史と違う、つまりパラレルワールドの戦国時代へタイムトリップして、その…舞さんて人と戻ってきてしまった。そこへタイムトリップ出来る計算式を見付けた猿飛くんという男性が、二人を迎えにこっちに戻ってきて、そしてまた二人で戻って行ったって事だよね」
「そうなんです。私も一緒に戻りたかったのですけど、逆子のまま戻ったら親子で死ぬだけだって姉に止められました」
デザートを食べ終えた葉月が話す。
「そうだね、戦国時代では切腹は出来ても、手術は出来ないからね…」
富谷が言うと弥生が頷いて、今度は弥生がデザートに手を付ける。
「タイムトリップの事はわかってもらえたとして、本題は富弥さんの事です」
きっぱりと葉月が言う。
「富谷さんが夢で見た男性と、私が会った富弥さん、どう考えても同じ人です」