第161章 富弥について、話す
「え…戦国に行く事が出来るの…?」
「行く為のワームホールを計算で見付けられればね」
「ワームホール?」
聞いた事の無い言葉を耳にして、富谷は首を傾げる。
「そう、ワームホール。葉月は偶然巻き込まれて飛ばされたけれど、計算式でワームホールを見付けて戦国時代へ自ら飛んだ人がいるの」
「それがそのおんなの人?」
「ううん、違う。そのおんなの人も巻き込まれたクチ。自ら計算してワームホールを見付けたのは、私が卒業した後、私が所属していた研究室に入ってきた猿飛佐助くんって子」
「同じ研究室?じゃあ同じ大学にいたんだ?」
「そう。だからもしかしたら、富谷くんとは、学食ですれ違うくらいはしていたかもね」
弥生はちょっと笑うと話しを続け、その間に葉月はデザートを食べていた。
「とにかくその猿飛くんはワームホールを見付けて、それが開くのを待っていたところ、偶然女性…水崎舞さんって名前なんだけど、来てしまって巻き込まれ、一緒に戦国時代へ行ってしまったの」
弥生は一口コーヒーを飲んで続ける。
「舞さんが飛んだ時がまさに、本能寺の変の真っ最中。彼女は織田信長を助け、やがて彼等から信頼を得て、織田家ゆかりの姫君として安土城で暮らしているんだって」
「へぇ…姫君…」
「でも彼女、葉月と一緒にこっちに戻ってきちゃったの。だけど、猿飛くんが舞さんと葉月を迎えに来てくれてね、ワームホールが開くまで二人はこっちにいたんだけど、少し前に開いて戦国へ戻って行ったよ」
「それ、見たの?」