第161章 富弥について、話す
皿がほぼ空になった頃、デザートの盛り合わせがコーヒーと運ばれてきた。
それらを各自の前に置き、葉月は口を開いた。
「先程の続きです。あのう、富谷さん、私、戦国時代で貴方によく似たかたに会っているんです」
「…俺によく似た?」
富谷はまゆをまた寄せる。
「はい、その人、名前が富谷さんの富に、弥生の弥で富弥さんと言うんです」
「俺の名字の富に、弥生さんの弥で富弥…名前、同じだね…それに、俺と似ている…」
「似ているというより、ご本人としか思えないくらい、です」
「…俺はタイムトリップはしていないよ?」
苦笑しながら否定する富谷に、葉月はわかっている、とばかりに頷く。
「はい、わかってます。戦国の富弥さんが働いていたのは、茶屋、今で言うカフェです。私がもともと働いていたのですが、私の後をうけて富弥さんがきて、働いてるんです。その茶屋の様子が、最初に聞いた、建物の外で布を敷いた大きな箱のようなところに腰掛けて、テーブルはなく、座った横に湯のみやお皿を置いて、お菓子やお茶を楽しむところ、そこでウエイターみたいな事をしているという事は、夢の富谷さんは、実際戦国時代で働いている富弥さんと同期しているんです」
「夢で同期、ねぇ。そうなると葉月さんが行った戦国時代は夢の世界って事?」
「ううん、そうじゃない。この子が戻ってきた時、一人じゃなくてもう一人おんなの人がいたの」
夢の世界をすぐ否定した弥生が続ける。
「彼女は戻る事を選んで、少し前に、先に戦国に戻って行ったよ」